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[代表インタビュー]創業96年でも​変化を続ける​ティール組織に230名で挑む​組織変革

#ティール組織 導入事例 #5:中西金属工業㍿ Interviewee:代表取締役 中西 竜雄 インタビュー日:2020年8月4日



会社名   中西金属工業株式会社
代表者   中西 竜雄
設立    1924年
資本金  25億1,250万円
従業員数  3,500名 ※すごい会議の導入範囲は、850名の事業体
事業内容​  軸受事業, 輸送機事業, 特機事業 他

中西金属工業株式会社 輸送機事業部は、須田をコーチとした「すごい会議」を2019年から導入。 その後、須田をアドバイザリーに迎え、「ティール組織」の考え方をもとにした組織改革を行うため準備を進めてきました。 いよいよ、本日2020年9月1日、権限委譲式=今まで組織階層上部の者のみが持っていた意思決定権限をメンバー約230名に委譲する宣言を行う式 ののち、社内の職制を撤廃し、社員全員が経営者と同じ裁量と責任を有する「フラット」な組織 かつ 「管理職」を撤廃し、各社員が自身の役割に応じて自主的に運営する組織へと移行しました。本インタビューでは、権限委譲式直後に行われたものです。

「ティール組織権限委譲式」

ティール組織導入のプロジェクトを担ったタスクフォースは現場で、その他メンバーはオンラインにて参加した。 いよいよ本日から「ティール組織」導入ですね! 今回のチャレンジをお伺いする前に、まずは御社のことを教えてください。 中西金属工業(NKC)はモーターなどの回転する部分に使われる軸受=ベアリングと、その中の核部品である"リテーナー"で世界トップレベルのシェアを誇る、創業96年の企業です。コンベアシステムや住宅関連部品でも高い商品力を維持しており、その技術力は他の追随を許しません。近年では社内プロジェクトから生まれた『AI搭載の次世代農機』の商品化に着手し、他にも大小様々な新規事業計画を進めるなど、勢いある社風が特徴の会社です。

創業96年の長い歴史を持つ企業なのですね。中西社長は、何代目なのですか 私は4代目の踏襲者です。 事業継承したときは33歳。そうして今、経営経験は21年になりました。 NKC代表の他にも、ベアリング工業会理事、大阪産業局理事を務めています。

そんな歴史ある企業かつ、中西社長の長い経営経験の中で、「ティール組織」の考え方をもとに組織運営をしようと考えたきっかけを教えてください。

約1年前、「ティール組織」の書籍を社員からプレゼントされて読んでいたこともあり、断片的に概念は理解していました。

そんな中、我々 輸送機事業部は須田コーチのもと「すごい会議」を導入しており、須田さんが代表を務めていた株式会社フリープラス* で「ティール組織」の考え方をもとにした組織運営を行い、組織を拡大して大躍進したと言うお話を聞いたことがきっかけとなり、より一層興味を持つようになったんです。

*須田は2007年に株式会社フリープラスを創業し、2019年より「ティール組織」の概念を組織運営に適用。正社員130名規模での「ティール組織」形態の導入は、日本でも稀にみる規模だった。訪日旅行事業, 宿泊事業, 地方創生事業 と展開し、世界40カ国と取引する売上高50億円, 20国籍以上から成る総メンバー350名の企業に成長させ、2020年2月まで代表を務めた。

「日本一・世界一のノウハウを世界に広めるためのギャップが大きかったんですよね」 それでは、実際に「ティール組織」導入の決め手となったことは何だったのでしょうか?

「ティール組織」導入経験を持つ須田さんがいたこともありますが... まずは、世の中が “やりがい” を重視して働く風潮になってきていたからです。そして「ティール組織」は究極の “やりがい” を目指せる組織なんじゃないかと感じていました。

もう1つは、我々 輸送機事業部がこの10年間、伸び悩んでいたということです。単価が下がり、仕事量は10年で倍になったのに、それでいて売上高はほぼ微増。そんな中で、付加価値の高い商品・サービスを提供していかない限り、輸送機事業としては、より一層厳しくなっていくことが見えていました。その打開策の1つとなるのが「ティール組織」の概念だと考えて、導入をきました。

事業の伸び悩みに対して、「ティール組織」の導入が効果的だと思ったのはなぜでしょう?

ティール組織の3つのブレイクスルーと言われる “自主経営” の概念のもと、情報をオープン化し、1人1人が意思決定者となることで、輸送機事業部にとって最適な行動、スピード感ある行動ができると考えたからです。

いままでは多くの企業同様、NKCもピラミッド型の組織形態で運営され、一部のトップ層が重要な情報を握り、部下に指示していました。情報を持っているもの(経験が長い者)が偉かったんです。 ところがいまの世の中は、情報共有の観点だけ見れば、ネットワークの発達により一瞬で情報をアップロードでき、誰でも簡単にアクセスできるようになりました。そして、それらは常に共有され、質問があればネットワーク上でメンバーに質問を投げかけ、すぐに解決できるようになったんです。

我々は「ティール組織」の概念のもと組織運営するからには、財務諸表含む あらゆる情報を輸送機事業部のメンバーにオープンにし、1人1人に意思決定権限を持って行動してもらいます。そうすることによって、意思決定と行動のスピード感がアップすると考えているんです。そして、組織としてもホップ・ステップ・ジャンプで利益率をアップさせ、付加価値も追求できる。そんなところに期待しています。

権限委譲式で中西社長のスピーチをZOOM越しに聞く、約230名のメンバーたち

須田にアドバイザリーを依頼した "一番の理由" は何だったのでしょうか? 先に述べたように、株式会社フリープラスに対し、「ティール組織」を導入・運用されていた実績を持っていることもありますが、それ以前に、須田さんは「信用できる人」であり「粘っこい人」だからです。 「粘っこい」というと...? 須田さんは「これだ!!」と決めたら、それを粘り強くフォローし続けます。 目標に対して、絶対に達成しようとするんですよね。 いま追い求めるべきではない目標はそれはそれで言ってくれますし、この部署にはこの制度をを導入すべきではない、まだそのレベル感に到達していない人たちがやらされ感で制度を導入しても意味がない、とはっきり言っていただいたこともありました。須田さんの発言には説得力もあり、うちの社員も彼のことを認めています。 もし須田さん以外から「ティール組織」導入アドバイザリーの提案がきたとしても、須田さんにお願いしていたと思います。 そこまで全幅の信頼を置いてくださっているのですね! はい。仮に他に「ティール組織」導入を手伝ってくれる方が現れたとしても、過去の経験から見ず知らずの人のプレゼンテーションで採用して、あとでうまくいかない、というパターンは結構あったんです。 我々は、会社全体としても様々なコンサルティング会社に入ってもらっていまして、その中でもうまくいかないパターンは「よそでうまくいっているから御社でもどうですか?」と杓子定規で提案してくるところです。他社でうまくいったからといって、うちでもうまくいくとは限らず、今までもそういったコンサルティング会社とお付き合いして、結果として失敗したこともたくさんあります。 須田さんのように継続して依頼する会社は、うちのことを親身に考えて、うちには何が最適なのか?と色々カスタマイズやアドバイスしてくれるところですね。


中西社長が「ティール組織」導入を決めたときに最初に行ったアクションは何ですか? 承認を取るために、経営会議で議題にあげました。 須田さんからは事前に “「ティール組織」の考えに基づいた組織運営を始めると、自主経営により、事業部全員が経営陣同等の意思決定権限を持ちます。経営陣は、それはしっかりと理解して覚悟しておいてください” と言われていたんです。ただ、それを言うと絶対に経営陣から反対されとわかっていたので、はっきりとは言わなかったんです。 まあでもそこは経営陣ですよね。みんなそのことは理解していて、「ティール組織は会社ごっこだ!」「軽い気持ちで社員全員が経営者と同じレベルで意思決定できるわけないじゃない!」と反対されました。 確かに、経営陣同等の権限をメンバーが持つことに懸念を持つ人は多そうな印象です。 その会議では、承認を得ることができたんですか? 決裁当日はみなさん反対されたんですが、僕が押し切りました。 とりあえず試しに導入、輸送機事業部からプレスタート、もしうまくいかないことがあれば、元の組織体制に戻す、緊急停止の指示ができるように設定しておく。という前提ならいいだろう、と説得したんです。 そうして導入開始日を9月1日と決め、あとはスタートするしかない!というところまで持って行きました。 押し切った、と言うことは、中西社長は相当な覚悟を持って取り組まれていたのですね。 はい、中途半端にやりたくなかったので! タスクフォースのメンバーからも、「社長、そんなに意思決定権限をメンバーに持たせていいんですか!?」と、2度質問されましたが、ティール組織の概念を100%実行してください、とお伝えしました。 何がそこまで覚悟させたのですか? 僕からしたら、ビジネスとしては10年間うまくいっていなかったという感覚なので、座して死を待つより、チャレンジするしかないんじゃないかなと。 あとは、もし途中で「ティール組織」導入の取り組みをやめてしまうと、いままで以上にモチベーションが落ちて、離職者が出るはずだと思っていました。実際に「ティール組織」を導入しない限り、離職するという若いメンバーが2名いました。

ティール組織タスクフォースメンバーと中西社長


退職しようとしていた若いメンバー2名は、ピラミッド型の会社運営に対して不満を持っていたということですか?

そう言うことです。 退職しようとしていたメンバーは30代で、「50代の上司と考え方が違うのでついていけない」とはっきり言われました。 50代のメンバーは「新しいことはリスクがあるのでするな」 一方でトップは「新しいチャレンジを積極的にしよう!」と言っている。 それで若いメンバーがチャレンジしようとすると、「トップが言っていることは夢物語で、我々はすでに今年の予算を組んでいるのでやるべきじゃない!」と言われたようで、それなら私はよその会社でチャレンジして行きたい、というのが理由だったようです。 その退職しようとしていた2名は、「ティール組織」導入により、NKC に留まりました。

それは「ティール組織」導入による1つのポジティブな影響ですね! それにしても、やはり経験年数や社歴が長いと保守的になってしまうものなのでしょうか?

そうですね。 経験年数、社歴、あとは年齢が高くなってくると「自分が NKC にいる間は、新しいチャレンジをするよりも平穏無事に過ごしたい」と考える人もいると思います。

あと、これは直接年齢は関係ないかもしれませんが、チャレンジしなくても、輸送機事業部にはそこそこ売上があり、保守的な組織体質になってしまっていたとも思っています。 例えば、過去に何度か M&A の話もあったんですが、いろんな要素で頓挫してしまうんです。何がなんでもやると決めたら、実現するんですけどね。M&A に関しては権限も予算も与えていたのにできなかったのも、1つの "チャレンジしない文化" の現れかなと思います。

そんなことを感じていたこともあって、今回のこの組織変革によって、やる気のある人がどんどんチャレンジできる環境にしたいと強く思っています。だからこそ、例えば「ティール組織」導入前に役職者だった人でも、やる気がないならリードリンク(収益責任を負わず管理上の権限も持たない、指示はできるが命令はできないリーダー)に立候補しないでください、とお願いしました。

中西社長は、なぜそんなに ”挑戦” を歓迎するんですか?

挑戦しない限り、組織が硬直して行くからですね。特に、この変化の激しい時代に生きていると。 たまたまこの間、企業継続を研究している早稲田大学の先生にお会いしたんですが、創業100年を超えられる会社は全体の5%のみで、ましてや200年以上存続できる企業なんて1%のようです。そして彼から「NKC は現在創業96年で100年はいけますよね。でも200年続く企業になるために何か施策をしないと、超えられないでしょ」と言われたんです。だから、柔軟に次の親族だけじゃなく、第三者ににも権限移譲できるようなやり方が必要だと。

私の仕事は、私がいなくなっても次の100年に挑んでいける組織づくりだと思うんです。

「ティール組織」導入を決めてから今日までに、すでに感じている変化はありますか?

タスクフォースメンバーのモチベーションが上がり、質問や意見が鋭く・厳しくなってきていることを感じます。いままで上司に握り潰されたり、ブレーキをかけられたりしていたところ、自分たちが “意思決定権限” を持ち始めたからだと思います。

あとは、入社3年目まで人事研修を一律プログラムとしてやっているんですが、先週、人事とも話す中で、それ以降も同じプログラムで全員受けてもらうべきなのか?という話になりまして。それぞれのキャリアや方向性があるので、一律で研修を押し付けることが実のある研修に繋がるのか疑問が上がってきました。 なぜ気がついたのかというと、研修後のアンケート結果によって、モチベーションが高い人と、やらされ感のある人の差が激しかったんです。なので、人事に対して、全て予算をとってやるべきか考えてくださいと伝えました。

最後に、須田さんにアドバイザリーを依頼したことは、それだけの価値があったと思いますか?

そうですね! 「ティール組織」導入プロジェクトは、須田さんのアドバイザリーなしに成り立ちませんでした。 もし須田さんではなく大手企業に依頼していたら、杓子定規で時間もかかって中途半端になっていたと思います。組織作りというのはすごく繊細で難しいもので、システムを適用するだけでは魂が入らず、機能しません。今回は、そこまで我々に合わせてアドバイスしていただいたお陰で、あたかも数年前から「ティール組織」に取り組んでいたような考え方や行動になっていると感じています。

今後の組織の変化が楽しみですね!

​本日は、貴重なお時間をありがとうございました!

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